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所長あいさつ

shimomura
KEK物質構造科学研究所長
下村 理

3月11日の東日本大震災で被害に遭われた方に心よりお見舞いを申し上げます。
KEKでも東海地区とつくば地区でかなりの被害を被りましたが、人的被害は幸いにもありませんでした。関係者のご支援とご協力のおかげで、放射光施設は6月から調整運転を行い10月からの本格運転を目指しており、J-PARCは年内にテスト運転に続いて年明けのユーザー運転を目指しています。この間、国内外の多くの放射光、中性子、ミュオンの施設から、物構研の施設を利用できなくなった共同利用者に対して、優先的にビームタイムを提供していただき、利用研究者の研究活動を継続させていただいたことに対して、厚く御礼申し上げます。

物構研は、加速器を用いた量子ビーム(放射光・中性子・ミュオン・低速陽電子)を共同利用として多くのユーザーに提供していますが、その研究環境は大きく変わりつつあります。まさに成果をあげようとしていたJ-PARCでは震災のために利用実験中断を余儀なくされましたが、この間装置の復旧のみならず、さらなる整備を進めています。来年からの再開で優れた成果の創出が期待されます。特に界面などの研究で世界をリードすることができる超低速ミュオンビームラインについては昨年度から基幹部の整備を行ってきましたが、測定器部分について今年度の新学術領域課題として採択されたことにより実現が可能になったことは大きな前進です。

一方、ERL推進室とPFでは5年前から計画を推進している次期放射光源としてのERL計画についてより具体的な検討を行い、利用エネルギーを軟X線領域にシフトすることでより多くの研究が展開できることを考えて、加速エネルギーを3GeVとしました。今年度に入ってから、3GeV-ERLを用いて行われるサイエンスの議論を中心とするワークショップを3回開催し、施設側からの提案内容説明を行い、利用研究者、ポテンシャルユーザー、産業界などの方々からの御意見をうかがってきております。この流れに沿って、今回の物構研シンポジウムでも初日にERLセッションを設け、よりいっそう議論を深めていただきたいと考えております。このセッションでは、アメリカでERL計画を精力的に推進しているコーネル大学のGruner教授にアメリカでの状況を披露していただきます。

二日目には主に構造物性研究センターで展開している強相関電子構造物性研究に焦点を当てます。構造物性研究センターの研究リーダーをDiscussion Leaderとして、「電子自由度秩序」、「表面・界面における電子相関」、「有機エレクトロニクスに向けた基礎研究」と「電荷によって誘起されるソフトマター&バイオマターの秩序と乱れ」の4テーマについて、今後の展開について現状の把握と今後の展開をまとめてもらいます。 皆様方に置かれましては、物構研シンポジウムご参加いただき、議論に加わっていただくとともに、物構研の研究活動に対して叱咤激励をお願いできれば幸いです。

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